vol, 4 「おばあちゃん大好き!」たまに実家へ電話をする。離婚した父親とは仲が悪いので父方の祖母と母親とだけ話す。 祖母は松山で小さな小料理屋を一人で営んでおり、 松山では知る人ぞ知る老舗となっている。 もう軽く80を越すおばあちゃんであるが現役で働いている。 仕入れにはスーパーカブを乗り回すヤンキーババアである。 家族をはじめ、客の誰もが心配して、『もう乗りなさんな』 と懇願するが、『誰が仕入れしてくれるんぞな、あんたかいな!』 と逆切れされる。 私が子供の頃、祖母のお店で留守番をしていると 額からダラダラ血を流しながら祖母が帰ってきたことがある。 『バイクで空き缶踏んでしもうた!』彼女は笑っていた。 彼女は強い。 数年前、当時付き合ってたニュージーランド人と一緒に帰省した。 もちろん私の彼氏です、などとは言えず、友達として紹介した。 なぜかこの男と祖母は意気投合し、ゲロ吐くまで飲み明かした。 今も小料理屋の奥座敷には私と元彼の写真が飾られている。 電話をすると必ずこの男が元気かどうか、と聞いてくる。 彼は元彼であり、もう終わったのだよと言えるものなら言いたいが 大正生まれの彼女にはちょっと刺激が強すぎると思われる。 先日電話したときも、最後はお決まりの結婚話になった。 強く言ってくるわけではないが、やはり結婚して欲しいらしい。 幸せになるために結婚と子供は欠かせないものだと彼女は信じる。 3つ上の兄はもう結婚して子供もいる。私だけが不安材料らしい。 自分は興味が無いし、そんな余裕もない、とシラを切る。 『早く孫の顔が見たいがな』と言われた。 ・・・私があんたの孫やがな 私の一番尊敬する、そして愛する人物である。 |